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最もシンプルな自己表現 〜ボディパーカッションの魅力
篠崎史紀(NHK交響楽団コンサートマスター) VS 山田俊之
平成15年8月  音楽之友社会議室にて
篠崎史紀 Shinozaki Fuminori 山田俊之 Yamada Toshiyuki
3歳より父の手ほどきでヴァイオリンを始める。早くに天賦の才能を発揮し、毎日学生音楽コンクール全国第1位。81年よりウィーン市立音楽院に留学。ヴィオッティ国際音楽コンクール(デュオ)で第3位入賞。その後オーストリアを中心に欧米、アジアで幅広く活動し、ウィーン市立音楽院修了後帰国、群馬、読売日本の両交響楽団でコンサートマスターを務める。97年4月、NHK交響楽団のコンサートマスターに就任。これまでに7枚のCDをリリースしている。  久留米市立荒木小学校教諭。小学5年より打楽器を通してクラシック他さまざまな音楽に親しむ。87年、からだを使ったリズム表現を考案し「ボディパーカッション」と名付け、「からだがすべて楽器」をテーマに活動を発展させる。小学校を始め養護学校、聾学校、精神科病棟、不登校児施設、高齢者施設等でリズム表現の実践指導を重ねている。日本音楽教育学会、日本音楽療法学会、日本学校教育相談学会会員。
コンサートマスター篠崎氏の呼び掛けに賛同したNHK交響楽団有志メンバーと共演したボディパーカッション
 日本を代表するオーケストラ、N響が、楽器を持たない子どもたちと共演した。子どもたちの楽器は「自分のからだ」、そう「ボディパーカッション」である。
 現在ではその輪を全国に広げているボディパーカッションの、いわば火付け役となった本、「ボディパーカッション入門」(小社発行)の著者、山田先生の情熱で実現した共演。そこから生まれたものは、大人と子ども、プロとアマチュアという壁を超えた交流だった。
篠崎 「ボディパーカッションのいいところは、何といっても道具がいらないってことだね」
山田 「参加した全員が、スカッと気持ちよさそうな顔になるんですよね」
           
プロも感動した『新感覚の音楽』
山田  まさにクラシックの頂点の方たちと一緒に演奏をしたわけですから、子どもたちにとっては、本当に大きな宝物になったと思います。
篠崎  ボディパーカッションとの共演は、N響の長い歴史においても例のないことですよね。僕がメンバーに声をかけたところ、ぜひやってみたい、ということで実現したんだけれど、これは演奏家というより『人として』の交流に意味があったんじゃないかな。
 僕は以前から福祉に関心を持っていたので、この演奏会でも最終リハーサルを公開にして、ハンディキャップをもつ人たちを招待したいと考えていた。そういう福祉的な部分に賛同してくれたメンバーもいると思うけれど、演奏会が終わったとき、『これは素晴らしい』『またぜひやるべきだ』『声がかかったらいつでも飛んでいくよ』とメンバーたちが口々に言った。
 つまりそれぐらい音楽的にも、何か凄いものを感じる演奏会だったということなんだよね。
山田  そう言っていただけると本当に嬉しいですね。生の楽器と生身の人間が奏でる音楽で、千何百人の人たちを感動させることができた。これは非常に大きな事だと私も感じています。
篠崎  子どもたちの一所懸命さに、大人の僕たちが逆に感動させられたんだね。
山田  世界に例のない新しいことをやるんだ、ということで子どもたちも一所懸命やってましたから。
篠崎  それにしてもボディパーカッションは凄いですよ。まったく新しい発想ですよね。身体を使って音を鳴らし、音楽的な表現をする。まあ、ここまでは僕の想像できる範囲だったけれど、山田先生の場合はその先があるからね。聴覚障害のある子も一緒に参加していると聞いて僕は驚きましたよ。
 これは僕の想像を超えるものだった。というのも僕たち音楽家は音を耳で確認しているわけで、聴覚というのは非常に大切なんです。たとえば僕たちが無音室に入って演奏すると、何だかわからない恐怖心に襲われて不安定な精神状態になる。それくらい音の無い状態というのは難しいものですから。
山田  ええ、メンバーの中には聴覚に障害をもつ子がいます。でも問題はありません。音符が読めない子もいます。でも曲はすぐに覚えてしまうんですね。
 何といいますか、心と心のつながりで共にやっていくという感じですね。お互いの音をどう合わせていくか、その一体感ですね。この感覚が味わえるのもボディーパーカッションの魅力のひとつでしょうか。
奥が深くて、さまざまな側面をもった活動
篠崎  音楽は世界の共通語といわれるけれど、楽譜上では若干の語学力が必要になる。その点、ボディパーカッションはこれこそが万国共通だよね。まったく国境がない。僕たちは楽器という道具を使って表現するわけだけど、楽器を弾くためには特殊な訓練が必要になる。ボディパーカッションには何もいらない。身体ひとつ。まさに『音楽の原点』であることは間違いないでしょう。特別な訓練をしなくても、子供から高齢者まですべての人が音楽を体験できるって素晴らしいよね! 先のことは誰もわからないけど、音楽を突き詰めていったら、結局はここが終着点なのかもね。
 ようするにボディパーカッションは、ただ身体を叩いて表現するだけだと思っちゃ困る(笑)、とそういうことですよ。たぶん皆さんが想像するよりも、もっと音楽的で、ある意味とっても教育的で、非常に奥が深いものなんですね。その過程には子どもたちの助け合いみたいなことも起こるわけだし、好奇心や真剣さも生まれるし、プロの音楽家が感動しちゃうくらい音楽的にも心に触れる部分があるんだね。
山田  この演奏会で、子どもたちがピアニッシモやフォルテッシモなどを自然にやろうとしていたんですよ。テンポが変化する曲では、プロの皆さんの息づかいや波動のようなものを感じ取って、自分で調整していたんです。ああ、音楽が生きている、と感じましたね。やっぱり本物に触れることは素晴らしいと実感しました。
篠崎  子どもたちには疑似体験ではなく、本物の体験をさせてやるべきだと僕も思いますね。CDに合わせることも可能だけれど、本物の体験こそが子どもたちを成長させるのだと。 『自分を表現したい』と子どもは思っているのに、その機会を大人が潰している場合がありますね。たとえ欠点があったとしても、長所が伸びてその欠点を包んだとき、それはその子の個性になるわけだから、長所をどんどん伸ばしてやって、彼らにはそのエネルギーを発散させる場を与えてやった方がいい。山田先生はそういう場を作ったわけだから凄い。
山田  私がなぜこの活動を続けられたかといえば、やっぱり子どもたちが生き生きとして、楽しそうにやってくれるからだと思うんです。ボディパーカッションをやった後は気持ちが落ち着くとか、子どもがスッキリした顔で家に帰ってくるとか、お母さんたちからも言われますので、やはり何か内なる力があるのかなと思っています。
篠崎  身体に刺激を与えることは、自分が生きていることを確認できる、というのもあるかもしれないね。
山田  そうですね。そして、誰でも気持ちがいいと言いますね。そういったことからすると、高齢者にとっても脳の活性化や痴呆防止にもつながるかもしれません。また、人は好きな音楽を聞くと、自然に身体が動いてリズムをとったりしますよね。それをもっと強調して、具現化したものがボディパーカッションといえるのかもしれません。
篠崎  いずれにしても僕は、皆さんにぜひ、実際に体験されることをお勧めしたいですよ。
−以上、音楽之友社「ミュージックセラピー」2003秋季号より引用−

写真館(Photo Studio)にも「NHK交響楽団トップメンバーとボディパーカッション
&クリスマスキャロル」の様子を掲載しています

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